解  説













「手影絵」の動物たちが、スクリーン狭しと飛翔する!

1952年(昭和27年)に設立された日本で最初の影絵専門劇団「かかし座」。60年以上にわたって、さまざまな影絵表現を模索してきたこの劇団が、2009年(平成21年)から海外で巡演し、好評を博しているのが 「Hand Shadows ANIMARE(ハンド・シャドウズ・アニマーレ)」 である。
数十種類の動物の姿を「手」の影絵だけで作り出す、大胆かつ繊細なパフォーマンスは、ドイツ、オランダ、スペイン、フィンランドなどのフェスティバルで大反響を巻き起こした。

「この手に、限界はない」を合言葉に、日々腕に磨きをかける出演者たち。この映画では、生命を吹き込まれた「手」が、まるで独立した生き物のようにスクリーンを飛翔する「神秘的な瞬間」を克明に描き出す。と同時に、これまで公開されなかったバックステージにもカメラを向け、創立60周年を記念した三大都市での国内ツアーや、ブラジル公演出発までの劇団員たちの姿を追う。
監督は、『火星のわが家』『凍える鏡』などの劇映画で、人間の心の「影」の部分を鋭く映像化してきた大嶋拓。本作が初めてのドキュメンタリー作品となる。

2013年夏、東京・新宿を皮切りに大阪、横浜、名古屋、京都、新潟などで劇場公開された本作品は、「芸能」「娯楽」「創造」というものの根源的な姿を見事に表現した映画として好評を博し、厚生労働省社会保障審議会の「特別推薦児童福祉文化財」に選定された。

「ANIMARE(アニマーレ)」 とは、ラテン語の「アニマ(霊魂、生命)」から派生した言葉で「生命を吹き込む、元気付ける」という意味。「アニマル(生命を吹き込まれたもの=動物)」「アニメーション(動画)」「アニミズム(万物に霊魂が宿るという信仰)」なども同語源。

懐かしく、そして新しい。世代を超えて愛される、かかし座の影絵ワールド

劇団かかし座は1952年の創立以来、独自の手法で多くの影絵作品を生み出してきた。当初はNHKの専属劇団として、連続シルエット番組「ルパンの奇巌城」「家なき子」「杜子春」等を制作。1973年には「竹取物語」がフランス・モンテカルロ国際TV映画祭の第2位になるなど、国内外の評価も高い。

近年は舞台上演にとどまらず、放送、出版、広告など多方面に活動領域を広げている。2008年、岐阜県下呂温泉合掌村に日本で唯一の影絵常設劇場「しらさぎ座」を開設し、連続影絵公演を開始。2012、13年には「魔法つかいのおとぎばなし」「宝島」が、厚生労働省社会保障審議会の「特別推薦児童福祉文化財」に連続選定された。

「Hand Shadows ANIMARE」に代表される手影絵は、「懐かしく新しいパフォーマンス」として近年改めて注目を集めており、その手技はコブクロの「蕾」プロモーションビデオやNHK『みんなのうた』の「ゆらゆら」等でもおなじみだ。

劇団かかし座公式ホームページ
「Hand Shadows ANIMARE」公演紹介ページ


あらすじ


「ANIMARE」の舞台裏で展開する、もうひとつの物語とは…

2012年7月。かかし座創立60周年を記念する「Hand Shadows ANIMARE」東京・大阪・名古屋公演の稽古が始まった。団員歴20年を数えるベテラン・飯田周一と石井世紀の2人に、まだ20代ながら実力派の菊本香代、櫻本なつみという最強の布陣。海外ではこれまで数々のフェスティバルで披露してきたステージだが、日本で連続公演を行うのは初めてとあって、メンバー4人のテンションも高い。稽古は順調に進んでいくかに見えたが、劇団代表・後藤圭の演出は現状に満足することを拒み、作品をさらなる高みに引き揚げようとする。
「初演の稽古の時は、新しい演目が作り出されると、われわれ自身も驚いていた。今はそういった発見に乏しくなっているんじゃないか?」
そんな後藤の言葉に、それぞれ自問自答するメンバーたち。動物園に行ってその動きから何かを得ようとする者、後輩への指導を通して初心を取り戻そうとする者…。ようやく作品の方向性が定まりかけた東京公演開幕前日、なおも後藤から新たな課題が提示された。
「かかし座の手影絵はわかりやす過ぎるんだ。全然今までと違うことって、できないかな…」
この一見無謀とも思える提案に、果たしてメンバーたちはどう応えるのか?